大野和士と京都市交響楽団

 昨年4月に初めて定期演奏会へ出かけて以来、久しぶりに京都市交響楽団の公演に出かけた(2009年7月23日:京都コンサートホール)。指揮者は大野和士だったが、主催者は指揮者の客寄せ力に驚かされたであろう。何しろ当日券には数十人の長蛇の列ができていたし、客席も9割以上埋まっていたからだ。
 個人的に大野が指揮する演奏会は、2006年1月の新日本フィル定期演奏会に出かけて以来2度目であったが、その間に彼自身の進境は著しいものがあったのではないか、と思う。
 演目は、前半がラヴェルの「ラ・ヴァルス」と「マ・メール・ロワ組曲、後半がショスタコーヴィチの「交響曲第5番作品47」だった。指揮者とオケは初顔合わせであるが、今回の演奏を聴いて、大野の要求に必死にオケが付いていく感じがして興味深かった。何しろ前回同じオケの演奏を広上淳一の指揮で聴いた時には、出る音のテンションの低さが気になっていたからだ。
 プログラム最初の「ラ・ヴァルス」は多少安全運転になったきらいがあったが、「マ・メール・ロワから徐々に調子が出始めていた。後半は、以前に聴いたサイトウ・キネン小澤征爾の実演(2006年9月)があまりにもテンションの高かったのに比べるとおとなしいが、それでも十分に満足できた。
 なお、開演前のプレ・トークで、7月21日に他界した若杉弘氏(新国立劇場のオペラ芸術監督)を追悼し、ラヴェルの前にバッハの管弦楽組曲第3番から「アリア(エール)」を演奏すると指揮者から説明があり、実際に弦楽器のみで同曲が演奏された。