Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks / バイエルン放送交響楽団

 2年もブログを中断していたが、久しぶりに書くこととする。

 ドイツではNHKにあたる放送局が各州に存在するが、2012年はヘッセン州バイエルン州の放送局に属するオーケストラが日本にやってきた。ヘッセン州のほうは6月に聴いたのだが、これが指揮者、オーケストラ、共演のピアニストともども聞きに行った甲斐のある内容であった。
 そして、今日(11/27)けなんは、マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)が指揮するバイエルン放送交響楽団の演奏をサントリーホールで聴くことになったが、果たしてどうなるか?

 東条碩夫さんのブログによると、今回のツアーはNHKとバイエルン放送による共同制作でテレビ収録を予定しているとのこと。そうなると、冒険を避けて正確さを求める演奏になるであろうと東条さんは予測していた。
 http://concertdiary.blog118.fc2.com/blog-entry-1531.html

 この日はベートーヴェンLudwig van Beethoven)の交響曲第1番、第2番が前半に、第5番が後半に演奏された。いずれも派手な効果を狙わずに、それでいて楽器パート間のバランスに注意を払いつつ、曲の進行には「たじろぎ」のなさを備えたものであった。こうした演奏スタイルは、2007年や2009年の日本公演でも聞かれたところである。ただし、第1番は最初の曲とあってか、ややぎこちないのが気になった。

 第5番では目立たないが「冒険」はあった。第4楽章の冒頭1〜2小節目、ここはハ長調の「ドー・ミーソー」が主旋律といってよい。ここでヤンソンスはミサ曲のコラールのような響きをオーケストラに出させていたのだ。同じ主旋律は、85〜86小節と207小節にも登場する。85小節のほうははっきりと一音一音切って、207小節ではテヌート気味にそれぞれ演奏しており、なかなかの細かい解釈である。

 アンコールはハイドン/ティエリオ編曲(ハイドンとは別人による作曲という説が有力だが)の弦楽四重奏曲第17番より第2楽章だった。

なんばにある2つの美術館

 大阪に山王美術館という施設がある。
http://www.hotelmonterey.co.jp/sannomuseum/index.html
 このURLから類推できると思うが、ホテルモントレが運営している。ホテル内の一角が展示場所なのだが、すぐ近くにチャペルがあり、8月28日に行ってみた時も結婚式をやっていた。
 展示は洋画、日本画、陶磁器で部屋が分かれている。このうち、日本画の部屋は、小林古径の屏風絵を軸に左右の絵が大きさを反映してシンメトリックに配置されていた。なぜこんな趣向にしてみたのか知りたいところだが、もらったパンフレットには特に説明はなかった。
 もう一つの美術館は、法善寺の門前にある上方浮世絵館である。こちらは昨年に行った。
http://www.kamigata.jp/index.html

 いずれもそれほど規模は大きくないが、混雑していないので、じっくり作品を観ることができる。

フィラデルフィア管弦楽団 対 イーヴォ・ポゴレリッチ(The Philadelphia Orchestra vs. Ivo Pogorelich)

 先月28日(2010年4月)、東京のサントリーホールフィラデルフィア管弦楽団の演奏を聴いた。前半にピアノ独奏で登場するはずだったマルタ・アルゲリッチ(Martha Argerich)は、娘の出産に立ち会うとかでキャンセルしてしまった。その代わりに出演することになったポゴレリッチの意向により、ショパン作のピアノ協奏曲第2番が演奏された。
 その時のすさまじい模様は、東条碩夫さんがブログで書いておられるので参照いただくとして、ここでは補足かつマニアックなことを2点記しておく。
 http://concertdiary.blog118.fc2.com/blog-entry-724.html

ショパンピアノ協奏曲第2番は、ピアノの演奏にフルートなど管楽器の独奏が絡む場面がよくある。ポゴレリッチが装飾音などを遅いテンポで弾くためか、息が持たないとばかりに出番の演奏を早く終わってしまうところが何箇所かあった。
・第2楽章が終了した後、半休止のうえ第3楽章が演奏されたが、指揮者のシャルル・デュトワ(Charles Dutoit)がピアニストに早く弾くよう促しているそぶりを見せていた。

 ところで、2007年1月にポゴレリッチのリサイタルを聴きに行った後、あるピアニストが私に「ピカソの絵のようだ」と感想を述べていたことが忘れられない。複数の視点による対象の把握と画面上への再構成、というのがピカソ(正確にはキュビスム)の作風の特徴だと理解しているが、東条さんが「作品解体同然の奇抜な演奏」と述べたことと近いのだ。

Berliner Philharmoniker Lounge

 近所にクラシック音楽のCDショップがないことから、インターネットの通販サイトを時々利用しているが、そのひとつであるHMV ONLINEのサイト内にベルリン・フィル関連のコーナーができた。
 このドイツにあるオーケストラは、インターネット経由で演奏が聴かれるようにしたりと、リモート戦略にとりわけ力を入れている。日本向けにはHMVジャパンと提携し、8月16日付で最新情報を提供するサイト(ベルリン・フィル・ラウンジ)を立ち上げた。以後、8月29日、9月7日、9月14日と続き、26日に5号目が掲載されている。
 いずれの号とも、「ベルリン・フィル関係ニュース」、「次回のデジタル・コンサートホール演奏会」、「アーティスト・インタビュー」、「ベルリン・フィル演奏会批評(現地新聞抜粋)」そして「ドイツ発最新音楽ニュース」で構成されている。演奏の一部などを収録したYoutubeの映像もアップされており、最新号には内田光子のインタビューを文章だけでなく、音声でも聴くことができる。また、「デジタル・コンサートホール」へ登録するための入口の役割も担っているようである。

ベルリン・フィル・ラウンジ(第5号):http://www.hmv.co.jp/news/article/909240041/

マティアス・ゲルネ(Matthias Goerne)のリサイタル

 大阪のいずみホールは、1993年から3年に一度「ウィーン音楽祭」というイベントを開いている。新聞記事(朝日だったと思う)によると、昨今の不景気で名前を冠した公演数は過去最低とのこと。当ブログ筆者は、10月10日(日)のマティアス・ゲルネ(バリトン歌手)とピエール・ロラン・エマール(ピアニスト)によるリサイタルだけ、聴きに出かける予定である。
 ゲルネは東京オペラシティでも歌う予定であり、これについて音楽ジャーナリストの林田直樹氏によるインタビュー記事が、オペラシティのサイトと林田氏のブログ(LINDEN日記)に掲載されている。後者はノーカット版とのことであるが、字が詰まっていて少々読みづらいのが残念である。

いずみホールの「ウィーン音楽祭」http://www.izumihall.co.jp/shusai2009/1010.html
・ゲルネのリサイタルの案内(大阪):http://www.izumihall.co.jp/shusai2009/1010.html
・ゲルネのリサイタルの案内(東京):http://www.operacity.jp/concert/2009/091011/index.php
・インタビュー(東京オペラシティ):http://www.operacity.jp/concert/2009/091011/interview.php
・インタビュー(LINDEN日記):http://linden.weblogs.jp/blog/2009/09/post-56d1.html

※ゲルネのオフィシャルHP:http://www.matthiasgoerne.de/

大野和士と京都市交響楽団

 昨年4月に初めて定期演奏会へ出かけて以来、久しぶりに京都市交響楽団の公演に出かけた(2009年7月23日:京都コンサートホール)。指揮者は大野和士だったが、主催者は指揮者の客寄せ力に驚かされたであろう。何しろ当日券には数十人の長蛇の列ができていたし、客席も9割以上埋まっていたからだ。
 個人的に大野が指揮する演奏会は、2006年1月の新日本フィル定期演奏会に出かけて以来2度目であったが、その間に彼自身の進境は著しいものがあったのではないか、と思う。
 演目は、前半がラヴェルの「ラ・ヴァルス」と「マ・メール・ロワ組曲、後半がショスタコーヴィチの「交響曲第5番作品47」だった。指揮者とオケは初顔合わせであるが、今回の演奏を聴いて、大野の要求に必死にオケが付いていく感じがして興味深かった。何しろ前回同じオケの演奏を広上淳一の指揮で聴いた時には、出る音のテンションの低さが気になっていたからだ。
 プログラム最初の「ラ・ヴァルス」は多少安全運転になったきらいがあったが、「マ・メール・ロワから徐々に調子が出始めていた。後半は、以前に聴いたサイトウ・キネン小澤征爾の実演(2006年9月)があまりにもテンションの高かったのに比べるとおとなしいが、それでも十分に満足できた。
 なお、開演前のプレ・トークで、7月21日に他界した若杉弘氏(新国立劇場のオペラ芸術監督)を追悼し、ラヴェルの前にバッハの管弦楽組曲第3番から「アリア(エール)」を演奏すると指揮者から説明があり、実際に弦楽器のみで同曲が演奏された。

2010年は「キャンディード」

 今日は兵庫県立芸術文化センターでオペラ「カルメン」を観た。その感想は後日書くとして、今日の話題は会場でもらったチラシとプログラムに掲載されていた来年の予定についてである。
 同センターでは、毎年夏に、芸術監督の佐渡裕が大ホールでオペラを指揮するのがほぼ慣例化している。来年はレナード・バーンスタインが作曲した「キャンディード」(原作はヴォルテールの「カンディード」で、綴りは同じCandideだ)と発表されている。2010年7月24日から8月1日にかけて西宮で6公演が実施され、その後、東急文化村オーチャードホール)でも数回上演される予定である。
 チラシによると、2006年にパリのシャトレ座でプレミエだったプロダクションとの由である。外国のプロダクションを借りて上演するわけで、これまでと違って自主製作ではない作品となる。なお、このプロダクション自体は、シャトレ座がイングリッシュ・ナショナル・オペラ(ロンドン)とミラノ・スカラ座と共同で制作したものである
http://www.enoinsideout.org.uk/eno/?page_id=5
http://englishnationalopera.wordpress.com/2008/07/11/the-pursuit-of-happiness-photography-competition/
カルメン」でも東京二期会などとの共同制作だっただけに、少なくとも製作段階から関わる作品を今後も上演してもらいたかったのだが。