来日できないオーケストラ

 アメリカのサブプライム問題を嚆矢とする、全世界的な金融(信用)危機がこういうところにも影響を与えた、という話題について書く。
 総人口30万人程のアイスランド共和国を拠点に活動するアイスランド交響楽団(Sinfóníuhljómsveit Íslands)が、経済危機を理由に日本での公演を中止してしまったのである。(http://sinfonia.is/ 10/17アクセス時点では、トップにそのことを触れたと思われる記事があるが、アイスランド語を私は読めない。どなたかご教示いただければ幸いである。)
 アイスランドには、国民総生産を上回る金融資産があったらしいが、金融バブルの崩壊とともに資産価値が下がった。これにより、国内の金融機関はたちまち経営難に陥ったのだが、政府がすべての金融機関を国有化したり、国内外の個人・団体の口座を凍結したりするなどの緊急措置をとった。
 そうなると、金融機関は経営再建を最優先しなければならず、文化支援活動を行う余裕がなくなってしまうのは目に見えている(ましてや口座も凍結されている!)。そして、その銀行のひとつ「ランズバンキ」はアイスランド交響楽団のスポンサーなのだ(オーケストラのサイトトップにロゴマークが載っている)。
 以前、フランスのル・コンセール・スピリテュエルという団体が、政府からの補助金が出ないことを理由に、日本での公演を中止したことがあった。その補助金はメンバーの渡航費に充てられるはずだったのだ。時事通信などの報道によると、アイスランド交響楽団は、ランズバンキの口座からお金を引き出せなかったとのことである。つまり、渡航費を支払うことができなかった、というわけだ。