東京二期会の「ラ・トラヴィアータ」

 2月14日に東京文化会館で観た。これまで、「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」は藤原歌劇団のプロダクションにしか接したことがなかったので、今回の宮本亜門による演出は新鮮だった。
 東京二期会はダブルキャストによる上演を実施しており、2日前の12日にも14日と同じ歌手による公演があったが、そちらについては東条碩夫さんの日記が詳しい。http://concertdiary.blog118.fc2.com/blog-entry-403.html
 ここでは、東条さんの書かなかった視点から触れておく。
・序曲の演奏中、舞台上では第3幕を先取りする光景が展開されていた。瀕死のヴィオレッタを、給仕のアンニーナと医師グランヴィルが看護しているところである。
ヴィオレッタとフローラ(=道を外れた女たち)の衣装を原色系の「ドレス」とすることで、一見セレブのようだがお里が知れている、または現実は娼婦であるという彼女たちの二重の立場を示しているように思えた。他方で男たちの服装は「チャラい」感じ。
・ジョルジオ・ジェルモンは、バリトン役ということになっているが、歌唱に1点変ト音という高い音が求められる。小森輝彦はその高音はうまくこなせているのだが、逆に低音が今一つ表現を出し切っていない憾みがある。この低音は藤原歌劇団で聴いた堀内康雄の表現が断然よいと思った。
・アッレマンディの指揮は速いテンポでかつ細かい設定を施していたが、舞台上の歌手だけでなくオーケストラ(東京フィル)でも、やや付いていっていない楽器パートがいた。