ドゥダメル・イン・広島

 ユース・オーケストラでありながら、世界的に見てその知名度ウィーン・フィルにも劣らないといってよいだろう。ベネズエラの「シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ」が18日に広島で公演を行うというので、新幹線にて出かけた。
 チケットの発売開始が10月になってからとクラシック・コンサートの興業としては遅めだったが、広島厚生年金会館はまずまずの入りだった。
 この日の演目は、17日の東京国際フォーラムと同じで、前半はベートーヴェンの三重協奏曲、後半はマーラー交響曲第1番だった。後者の演奏について、音楽監督グスターボ・ドゥダメルのテンポの緩急のつけ方は、CD(チェコ・フィル)で聴く小林研一郎ととても近いものを感じた。あと、弦楽器が全体で90人余りにもかかわらず、弱音を響かせるところが「ぼってり」していないのにも驚かされた。
 ベートーヴェンでは、伴奏はブラームス風というかがっしりとしていて好感がもてた。というか、それぐらいやってもらわないと、この曲は3人のソロを聴くだけになってしまい、曲の魅力が伝わらないだろう。ソリストはヴァイオリンのルノー・カプソンが集中力を見せた力演で、チェロのゴーティエ・カプソンも伸び伸びとした響きを作り出しており、この二人(兄弟)が協奏するところの息はぴったりあっているのが小気味よい。マルタ・アルゲリッチのピアノは、第3楽章で息切れの感があったのと、171小節あたりで明らかに指のもつれがあったのを除けば、まずまずの出来。
 アンコールは、バーンスタインウェスト・サイド・ストーリーから「マンボ」、ヒナステラエスタンシアから「マランボ」だったが、噂に聞いていたとおりノリノリな雰囲気だった。これは実際に観てもらうしかない。
 なお、公演プログラムによると、今回の来日公演はチェスキーナ・永江洋子さんが財政的支援を行ったとのことである。彼女はニューヨーク・フィルハーモニックピョンヤン公演に資金援助したことで話題になった人物である